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「の」と「が」の交替の条件

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帖子 由 Ageha123 周四 一月 24, 2008 1:26 am

「の」と「が」の交替の条件

一般に言われるように、「の」と「が」の交替が可能に見えるが、制約が
ある。次にそれについて述べる。
連体修飾句における「の」と「が」の使い分けについては、田中章夫は
「天気(の/が)いい時」という例を使って、これを「天気にあたる部分
(主格)」と「いいにあたる部分(述格)」と「時にあたる部分(被連体
格)」の部分に分け、それぞれについて、どんな場合に「の」と「が」の使
い分けが生じるかを検討している。その結果、「が」は使えるが、「の」は使
えないというパターンの多さが、第一に目に付く。そこで、田中の指摘から
始めよう。
A「天気」にあたる部分(主格?対象語(格))
1、程度?数量などを表す、副詞的な性格を持つ体言の場合
1.連日が三十度を超える猛暑
2.最高がダウ1800円に達する暴騰
3.大部分がくさっているリンゴ箱
2、副助詞などが付いて、1と同意の体言になった場合
4.先生までが参加なさる必要
5.バスをおりてからが三十分かかる村
6.10人ばかりが集まる会
3、形容動詞語幹のような、情態性の意味を表す体言の場合
7.水の不便が解消しない土地
8.仕事熱心が災いした彼の不幸
9.昔のきれいさが失われてしまった渓谷
4、不定詞や指示語である場合
10.どこかが故障している車
11.いつだったかが分からない契約
12.そこらが明らかになる解答
5、形式名詞である場合
13.ことが表だってしまう前
14.最後のが見えなくなった時
15.早く行ったほうがいい場合
B「いい」にあたる部分(述格)
1、「名詞+である」の形の場合
16.主人が弁護士である家
17.縦横が九十センチと十四センチである長方形
18.人口が500万だった東京
2、受身?使役などを含む、複雑な表現になっている場合
19.先生の人格が印象付けられる話しぶり
20.父が捺印させられた書類
21.夫が到着したであろう時刻
3、補語や連用修飾語などを伴っている場合
22.子供たちが勢いよく駆け登った石段
23.成績がかえって落ちる塾
24.道が県庁にぶつかる手前
4、接続や中止法の表現を含む場合
25.天気がよくて暖かい日曜日
26.子供が振り返りながら遠ざかっていく姿
27.警官が飛び込み、泳ぎつき、助けあげる間
C「時」にあたる部分(被修飾格)
1、副詞句を構成する体言である場合
28.電気が消えた途端
29.日本経済が成長した結果
30.市長が代わったため
2、形式名詞的なものである場合
31.生活がすさんだのは、
32.母が注意したせい
33.二人が生活できるくらいは、
田中は「が」から「の」への置き換えの条件を整理して、次のようにまと
めている。
1、Aの「天気」にあたる部分(主格·対象語(格))とCの「時」にあ
たる部分(被修飾格)に位置する名詞が名詞らしい名詞であること。つまり、
名詞句の修飾節である埋め込み文において、主語は体言、或いは形式名詞的
なものでないと、「の」は使いにくい。
しかし、この点では問題点がある。Aの1、2の例では、「が」を省ける
のに対して、その他の条件の例では、省けないのである。「の」に変えたら、
1′.連日の三十度を超える猛暑
2′.最高のダウ1800円に達する暴騰
4′.先生までの参加なさる必要
5′.バスをおりてからの三十分かかる村
のようになる。それはほとんど考えられない。「連日の」後ろに読点を打
つか、「三十度をこえる連日の猛暑」とするかしないと、変である。つまり、
Aの1、2の条件は、他の条件と違って、「の」の使用を拒否する条件だと
も考えられるのである。
2、Bの「いい」にあたる部分(述格)の構造が比較的単純で、短いこと。
及び「である形」でないこと。
まず、Bの2、3、4のような、述語の構造が複雑な場合、その主格や対
象(語)格は、その表示を本務とする「が」で表すことができるし、それで
自然である。しかし、「の」は本務が連体修飾であるから、連体修飾句の中
でも「比較的単純で、短い」述語の主格や対象(語)格を表すのがせいぜい
で、複雑な構造を持つ述語の主格などは表しえない、と考えられるのである。
Bの1のように、述語が「名詞+である」の構造を持つ場合は、更に明ら
かである。「の」は連体修飾を本務とするから、この種の例の「が」を
「の」に変えると、
16′.主人の弁護士である家
17′.縦横の九十センチと十四センチである長方形
のような連体修飾関係が形作られてしまう。少なくともその可能性が非常
に高くなって、「主人(が)弁護士である」「人口(が)500万だった」と
いう主格関係とは受け取りにくくなるから、「の」が使いにくいのである。
それとは逆に、連体修飾句の中で「の」が用いられている場合は、大半が
「が」に置き換えられる。しかし、ここでも、やはり「が」に変えにくい場
合がないわけではない。田中は「慣用的な言い方」にこの種のものがあると
して、次のような例を挙げている。
34.大勢のおもむくところ
35.気のない返事
これらの表現は慣用句とも呼べるもので、そのために「の」を「が」に変
えられないと思われる。もちろん、慣用的な言い方には、「が」しか使えな
いものもある。例えば、
36.気が気でない様子
37.足が出た金額
もう一種、「の」は使えるが、「が」は使いにくい条件があるように思われ
る。それは、近くに主格や対象(語)格を表す「が」がある場合。例えば、
38.罪のないことがはっきりしていた。
39.顔色の悪いのが気になる。
40.口のきき方の静かなのが特徴である。
これは、言うまでもなく、「が」が重なるのを避けるための処置で、した
がって「の」にしたほうがより自然である。
以上に検討してきたことから見ると、連体修飾句の中で主格や対象(語)
格を表す「の」と「が」に関しては、次のようなことが分かる。
1、「が」は、「慣用的な言い方」や「が」の重なりを避ける場合を除いて、
一般に用いられる。
2、「の」は、その使用にいくつかの制約があり、自由には使えない。こ
れは、「の」の本来の機能が連体修飾にあるからで、その点で「の」は、連
体修飾句の中でも主格や対象(語)格を表す機能を真に獲得したとは言いが
たい。主格や対象(語)格を表すのは、連体修飾句の中でも、やはり「が」
なのであって、「の」はその一部を共有しているにすぎないのである。両者
は本質的に異なるものである。
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